先端技術と国防
ヒトとその他の動物の違いの一つにヒトはものを作る。多種多様なそれこそ至る所までものを作る。太古の昔は打製石器や磨製石器それに土器や土偶を作る。ずっとものを作り続け移動手段である船舶、自動車、航空機。通信手段である電話やテレビから携帯電話、インターネット。戦闘手段である刀剣、弓、鉄砲から戦車、プロペラ戦闘機からジェット戦闘機、ミサイル。数えきれないほどのものをヒトは作る。そして頭脳までも作ろうとコンピューターを作った。コンピューターのおかげで身近な生活空間から産業や宇宙の彼方まで制御することができる時代になった。その制御はヒトが行っていたのだがAIの出現によりその制御さえもコンピューターがヒトに替わって行うことが可能になる。AIは物ではないがこれもヒトが作る。この先ヒトは何を作るのだろうと思うとわくわくしてくる。
技術は常に革新しているが、その革新を促し開発するのはヒトだ。
先端技術の半導体産業に携わっている私はずっと歯痒い思いをしていた。1980年代は日本の半導体会社は世界トップ10ランキングで8社ほどを占めていたが2019年のランキングではついにトップ10から姿を消した。
コンピューターの主要部品は半導体である。半導体は産業のコメとも言われている。とにかく現代においては半導体がなくては何も動かない。
日本はバブル崩壊後日銀は金融緩和せず長期にわたるデフレを作り結果として日本からものつくり産業をチャイナや韓国に売り渡したのである。半導体産業もその一つ。優秀な半導体技術者はチャイナや韓国の企業から微々たるオファーで買われてしまい産業のコメである半導体作りは奪われ日本からなくなった。
言うまでもないことだがコンピューターは軍事技術には欠かせない先端技術である。アメリカは次世代通信網5Gの主権をチャイナに取られないため5G世界規格統一を図るHUAWAY社を締め出している。HUAWAYの機材を経由してWiFi通信するとスパイ装置により通信情報は抜き取られチャイナ共産党から提出依頼があれば国防動員法によりHUAWAY社は情報提供するのである。もっともHUAWAY社そのものがチャイナの人民解放軍の傘下企業であるのですでにそのままチャイナ共産党へ情報やデータは抜かれている可能性も否定できない。
チャイナの脅威が日増しに大きくなる中チャイナは2008年に千人計画を打ち出している。海外から優秀な人材を招致する計画である。毎月の報酬は5万ドル (550万円) 生活費15万8000ドル(1,700万円)の他高級住宅寄与、交通費免除、子供の学費免除。まあだいたい一人年間1億円程度が与えられるのである。彼ら優秀な人材の頭脳は全てチャイナ共産党の覇権のために使われるのだ。そしてそのリストには日本人もたくさん含まれている。
チャイナ共産党が世界の覇権を取ったらどうなるか。かつてソビエトが共産革命の下世界覇権を狙い領土を拡大し暗黒世界が出現するところだったことを忘れてはならない。今やチャイナが世界を共産主義にさせ混沌とした世界観で覇権を取ろうとしている。
半導体を含む先端技術産業は日本と米国に集中している。日本は米国と共に先端技術の流出を防ぐ政策が急務である。先端技術は生活様式を豊にし快適で愉快な空間をつくってくれる一方軍事転用すれば恐ろしい技術と化すのである。
太古の昔でも打製石器から磨製石器を作ったときの磨製石器は先端技術であった。日本列島では武器になるような石器は出土していない。当時の磨製石器は生活様式を豊にし快適で愉快な空間をつくってくれた先端技術だったのだ。
日米共同で先端技術のチャイナへの流出を防ぐための法案整備を切に願う。
令和弍年7月6日
山下政治経済研究所