山下政治経済研究所

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技術の融合が及ぼす戦略とパワーバランス

2024.06.30

20世紀後半から21世紀にかけてそれまでの技術とは次元が異なる進化をし、今なおその技術は進化し続けている。
3Dプリンター、ナノテクノロジー、亜宇宙空間、人工知能、ドローンの技術とその融合が今後世界のパワーバランスを変えるかも知れない。

東京の秋葉原へ行くとフィギュア(人形)ショップが沢山ありどこも繁盛している。あの様なフィギュアは、以前は金型を作り金型に材料を溶かし込み固めて成型した製造方法であったが多種多様なフィギュアの製造にはそれぞれ金型を作らなければならずコスト高であった。しかし3Dプリンターの出現で金型なしにあの様な複雑な3次元物体を容易に製造でき低コストになった。

「3Dプリンターで成型できる材料の最新リストによるとステンレス綱、青銅、金、ニッケル、アルミ、チタンなどの金属;炭素繊維、ナノチューブ;幹細胞;セラミックス;食品」などが成型可能だ。今やフィギュアといったホビー製品ではなく、なんと「2015年にオーストラリアの研究者たちはジェットエンジンをプリントした。」としている。https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/3d-printer-creates-jet-engine-world-first-10072740.html

「この技術を使用してチタンから部品をつくる方が材料の浪費がゼロに近いため従来の機械加工よりも安価である可能性がある。」https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap-weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

ナノテクノロジー分野においては国家安全保障と言えばナノエネルギーである。これは別の言い方をすれば爆発物。「ナノ爆薬は従来の爆薬の2倍の出力を生成した。」Andrzej W. Miziolek, “Nanonenergetics: An Emerging Technology Area of National Importance,” AMPTIAC Quarterly 6, no. 1 (Spring 2002): 45

「たとえ2倍の威力とはいえ一つの兵器の威力が100%増加することを意味するのだ。プラットフォームが小さくなればなるほど破壊力も大きくなる。」https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap-weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

カーボンナノチューブは構造強度に必要な重量を劇的に軽減させ、ナノ材料の電池への応用は電池の容量を3倍にし、寿命を4倍にしている。小型で大容量超寿命電池を搭載した軽量な車両やドローン等は航走行距離を飛躍的に伸ばすことが可能だ。

亜宇宙空間である「成層圏へ気球を浮かべ地上に信号を送信し電波の届かないエリアとのインターネットサービスを可能にするグーグルのProject Loonは費用対効果の高いインターネットサービスとなる。」
また「高度7万フィート上空を太陽電池で飛ぶ超高度長距離ドローンは高価な人工衛星を不要とする人工衛星能力も持つドローンである。」ロケットの打ち上げや高価な人工衛星とは比べ物にならないほど安価なコストで人工衛星能力を持つことが可能だ。

GPSのナビゲーションにより自律ドローンが完成しているが、狭い屋外や屋内環境や密集した都市、GPSが混雑している地域ではGPSは不十分である。しかし「人工知能技術 (AI)による慣性ナビゲーションと視覚ナビゲーションによりGPSに頼らない完全自律式ドローンの開発が行われている。」これが完成すれば軍事用途にドローンを活用することができる。GPSではターゲットエリアまでは到達できるが特定ターゲットには到達できない。AIによる視覚ナビゲーションと「マルチスペクトル画像を使用して航空機や燃料トラックなど個別のオブジェクトを識別できる。」http://www.agricultureuavs.com/photos_multispectral_camera.htm.

先ほどからたびたび出ているドローンだが、その性能は飛躍的に向上した。性能のみならず価格も安価になり従来は裕福層のみが入手できるホビーであったが今では一般に普及するまでに至っている。
性能が向上したとはいえ小型ドローンの積載量は限られている。しかし爆発成形ペネトレータ(EFP)を搭載することにより小型ドローンは兵器と化す。「わずか数ポンドの重量で、EFPは装甲車さえ破壊することができる。」https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap-weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

そして「3Dプリンティング会社のVoxcel 8は電子機器とエンジンを搭載したドローンを完成できる新しいプリンターを発表した。」 http://www.gizmag.com/voxel8-3d-electronics-printer/35489.

さらにドローンは地上や空中のみならず水中でもその技術が生かされる。これにより潜水艦がいずれ無力化されるのではないかと懸念される。特にコストの面では潜水艦対ドローンでは比較にならない。「米国バージニア級潜水艦一隻分のコストで17,500機のドローンが購入できるのである。」https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap-weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

ドローンは、また大群を形成し相互に通信しあいAIによりターゲットを認識し攻撃してくる。これらドローンとAIの融合の一番の脅威は自律性である。
「指定されたターゲットにサイン–インされた以外の外部からの入力を必要としないため妨害を受けることがない。」「人間の介入を必要としないため、非常に多くの人が運用できるようになる。」」https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap
weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

 

以上のような技術の発展とその拡散は、従来であれば大国のみが空母、戦闘機、イージス艦、潜水艦といった長大軍備に投資ができて世界のパワーバランスをとっていたのだが、このような技術の融合により安価なドローンにナノ爆薬を積みAIにより個別ターゲットの認識による攻撃が可能となる。そしてその製造には材料とプログラムがあれば完成する3Dプリンターがあればよいため中小国家あるいはISISのような組織が大国を脅かすパワーを持つことが可能になるのだ。なんといってもコストがはるかに安価であることが特徴だ。

今後米国を始めとするその同盟国はこれからの戦略を熟考する必要がある。それには「敵が戦域内を攻撃することができる場合、介入の戦略的利益はコストに値するか?」という質問の答えを出さなければならないだろう。https://www.cato.org/policy-analysis/technologies-converge-power-diffuses-evolution-small-smart-cheap-weapons?queryID=c769c5538db0463a8ff8c1efd77741f4#sea-domain

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