The Dead Rabbit
ニューヨークのマンハッタン最南端付近にあるThe Dead Rabbitというバーがある。「Dead Rabbit」はそのまま訳すと「死んだうさぎ」という意味だ。店の名前としてはなんともおどろおどろしい名前だ。
大飢饉に見舞われ故郷を離れアメリカン・ドリームを夢見たアイルランド人がニューヨークに毎日のように港から降り立ち移民していた。貧しい彼らが住むことができたのは安アパートや晩春宿の密集するファイブ・ポインツという混沌とした街だったのである。ここはネイティブ・アメリカンズと名乗るアメリカ生まれの住民の縄張りだった。それに対抗するために結成したアイルランド移民達はデッド・ラビットを組織した。そして熾烈な抗争が始まった。
2002年に上映された「Gang of New York」という映画がこの抗争を題材にした映画である。
このような背景をもつバーなのだ。ニューヨークでは人気のあるバーでお酒だけではなく食事も美味しい。週末はブランチで賑わうバーである。
写真はバーカウンターだが、これと全く同じバーカウンターが裏にもある。床にはおが屑がばら撒かれている。これはこぼしてしまったビールを掃除するためにあらかじめおが屑を床にばら撒くそうだ。アイリッシュのトラディショナルなバーの習慣とのこと。理にかなっているといえばその通りかも知れないがペットの犬や猫のトイレもおが屑が敷き詰められていたと思う。
Dead Rabbitオリジナルのビールを注文した。アイリッシュバーなのでギネスのような黒ビールだ。飲みやすくこれはなかなか美味しいビールだった。ここ数年はビールといえばIPA(インディアン・ペイル・エール)ばかり飲むようになった。苦味や香りが強くアルコール度も高いビールである。これに飲み慣れるとほかのビールに物足りなさを覚えるのだが、ここのオリジナルビールはIPAを飲み慣れたボクもいい感じだと思った。
ビールを飲み干した次はやはりウィスキーだ。アイリッシュウィスキーのオンザロック。下の写真のように氷が正方形で濁りが全く無い氷だ。不純物があると氷の中央部に不純物が閉じ込められて白く濁るのだが、この氷は綺麗だ。おかわりをしてしまった。
ウィスキーの肴にオイスターを注文した。米国のオイスターは比較的小さめのものが多い。とくにノースウェスト地区で食べるオイスターは小ぶりだ。でも濃厚でクリーミー。生牡蠣とは違うかな、って感じがする。この店のオイスターはそこそこの大きさだった。ケチャップ(多分シュリンプカクテルに使うソース?)、黒酢、ホースラディッシュ(わさび、でも白い)、それとタバスコとレモンが付いてきた。それぞれにいい味しながら楽しめるのだがレモンをキュッと絞っただけのオイスターが美味しいかな?以前にスコットランゴに赴任されたお客さんが言ってたけど、シングルモルトウィスキーを垂らしてオイスターを食べると美味い、と。ボクの場合ならシングルモルトをグラスに注いでオイスターを入れてそのまま飲むほうがいいかな?
ご存知の方もいしゃっしゃると思いますが、スライダーというメニューがある。小さなハンバーガーが3〜4個一皿に入ったメニューで食事というよりはビールやウィスキーのおつまみ感覚で食べる。写真はポークリブバーガーのスライダーで4個入っていた。ポークリブがよく煮込んであり、これに玉ねぎやその他野菜がバーガーバンにサンドイッチされた小さいバーガー。一口食べたら程よい甘みがあり、これが癖になりそうなおいしさだった。店内メニューにはいろいろと気になるディッシュがあるのだが、次回ここへ来た時はこのスライダーは外せない。スライダーサイズでなくてフルサイズもあるのでフルサイズを注文してもいいかな、って感じ。
週末の11時に入ったので空いていたけど店を出る時はもう満席で空席を待つ列までできていた、ニューヨークの人気バーなのだ。おどろおどろしい看板なのだが19世紀初頭のニューヨークの歴史が刻まれたお店。いまやギャングは見なくなったが当時は相当危険な地域だったのだろう。今度は夜に飲みに行ってみよう。